世界最小!超小型衛星打ち上げロケット、JAXAが突然発表

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宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、観測用小型ロケット「SS-520」を改良したロケットで超小型衛星を打ち上げると発表した。ロケットの全長は9.54m、重量は2.6tで、人工衛星を打ち上げる宇宙ロケットとしては世界最小だ。2016年5月27日に開催された文部科学省の宇宙開発利用部会、調査・安全小委員会で報告されたが、これまでこのようなロケットの構想はあったものの、開発状況が具体的に説明されたことはなく、突然の発表となった。

これまでの世界最小宇宙ロケットは、東京大学宇宙航空研究所(後の宇宙科学研究所(ISAS)、現在はJAXA内の同名の研究所として統合)が1970年に日本初の人工衛星「おおすみ」を打ち上げた際に使用したL-4Sロケットで、全長16.5m、重量は9.4t。SS-520はその1/3以下だ。

打ち上げ時期は未公表だが、通常、調査・安全小委員会での報告は打ち上げの数か月前に行われるため、今年度内に打ち上げられると思われる。

需要が高まる超小型衛星専用ロケット

超小型衛星は小さなものでは10cm角のサイコロ型から数十cm、重量は数kgから数十kgといったもので、携帯電話のような超小型電子技術の発達で近年、実用化されつつある。しかし衛星を打ち上げる宇宙ロケットは小さなものでも数百kg程度の衛星を打ち上げるサイズがあるため、超小型衛星は他の衛星と相乗りで打ち上げている。

しかしこれでは、相乗り相手の衛星に打ち上げ時期や軌道を合わせる必要があるため、自由に打ち上げることができなかった。そこで超小型衛星に合わせた超小型ロケットが望まれるようになってきた。

観測ロケット「SS-520」を小改造

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ISASは宇宙ロケットを打ち上げる以前から、観測ロケットを打ち上げてきた。観測ロケットとはその名の通り、航空機が飛行できないほどの高い高度の大気を観測したり、無重力実験などを行うための、宇宙空間には到達するが衛星にならずに落下するロケットのことだ。

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現在使用している観測ロケットのうち最大のものがSS-520で、1段式のS-520に2段目を追加して性能を向上したものだ。第1段、第2段とも固体推進剤を使用しており、140kgの実験機器を高度800kmまで運ぶことができる。これまでSS-520は2回(3号機は打ち上げ時期未定)、S-520は30回打ち上げられており、日本のロケットとしては実績は多い。このため第1段と第2段はSS-520を活用し、小改造と第3段の追加で宇宙ロケットに仕立てる模様だ。

ISASによる衛星打ち上げ、復活へ

今回打ち上げる4号機は実験機器の代わりに第3段ロケットと超小型衛星を搭載する。第1段、第2段は従来のSS-520から大きく変えていないため、新型ロケット開発のような大規模な開発体制ではなく、実験のひとつとして報告されたものと思われる。

ISASの宇宙ロケット「ミューロケット」は1機ごとにISASの研究員や学生が手を掛けて開発し、実験として打ち上げていた。しかし最終型のM-Vロケットの次の小型ロケット「イプシロンロケット」は組織上、ISASの手を離れてしまった。SS-520を使った衛星打ち上げは、久しく行われていなかったISASによる衛星打ち上げ実験の復活とも言えるだろう。また超小型衛星の打ち上げ手段が増えることで実験的な衛星開発もしやすくなり、技術開発や人材育成の面も期待できる。

日本がリードするか、超小型ロケット

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超小型衛星用宇宙ロケットは近年、世界各国のベンチャー企業による開発が行われている。日本でもインターステラテクノロジズ社(IST)が、今年夏の打ち上げを目指して観測ロケットの開発を進めている。SS-520の4号機は既存の観測ロケットを基にしているため、いきなり衛星打ち上げに挑戦する格好となった。

観測ロケットを含む、日本の固体ロケットのメーカーは、IHIエアロスペース社(IA)だ。IAは以前よりISASとともに超小型衛星用ロケットを提案しており、ようやく実験に漕ぎ着けた格好となる。IAがISTのように商業打ち上げを目指すのであれば、日本に超小型衛星用ロケット打ち上げ企業が2社誕生することになる。

超小型衛星用ロケットの打ち上げに成功した例は、世界にもまだない。IAが成功すれば、世界のベンチャー企業に「老舗」の実力を見せつける格好になるが、ベンチャー企業は低コスト化を至上命題に掲げており、SS-520も打ち上げ費用をさらに下げていくことが課題となるだろう。ベンチャーのISTに加えてISASの研究者、大企業のIAが超小型衛星用ロケット開発に参入したことで、日本の超小型ロケットが世界をリードすることに期待したい。

Image Credit: JAXA,IST

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大貫 剛
東京都庁に技術職職員として11年間勤務後、民間宇宙開発を志して退職。ベンチャーを経て、宇宙開発や前職の経験を生かして公共事業に関する解説などの、情報発信をしている。宇宙作家クラブ会員。

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