9月1日公開、映画「トリガール!」は鳥人間コンテストのノンフィクション?

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今年第40回を数えるに至った読売テレビの名物番組「鳥人間コンテスト」。そこに参加する大学生たちを、中村航さんの手で青春小説として描いたのが「トリガール!」だ。その「トリガール!」がいよいよ映画化され、9月1日から公開されることになった。

25年前に鳥人間コンテストに初出場し、大学卒業後も社会人チームなどで参加してきた筆者にとって、「トリガール!」は待ちに待った鳥人間映画。技術系ライターの筆者にとって映画レビューは初めてだが、鳥人間コンテスト経験者の目で見た「トリガール!」を一足早く、皆さんにご紹介しよう。

理系女子大生が巻き込まれる?鳥人間達の青春

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主人公の鳥山ゆきな(演:土屋太鳳)は雄飛工業大学に入学したばかりの1年生。メガネの理系男子ばかりの大学に入学したことを少し後悔気味だが、よく見ると彼女自身もちょっと理系ファッション?だ。そんな彼女は成り行きで、鳥人間チームのサークル部室を訪れてしまう。先輩のイケメンパイロット、高橋圭(演:高杉真宙)に思わぬ言葉を掛けられたゆきなは鳥人間パイロットを目指すが、もうひとりのパイロット、坂場大志(演:間宮祥太朗)は居酒屋でやさぐれていた。ゆきなはパイロットとして鳥人間コンテストに出場できるのか?

筆者は映画評論家ではないので、ストーリーを文字にするとベタになってしまうのはご容赦頂きたい。しかし、青春とは元来、ベタなものではないだろうか。そして鳥人間コンテストという非日常が日常になったとき、ベタな「青春ラブコメ」は「熱血青春映画」になっていく。

誇張はあっても虚構ではない、素顔の鳥人間チーム

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映画だから、誇張はある。でも、全く見たことがないかと言えばそんなことはない。むしろ筆者にとって、どのシーンも過去に経験があること、あるいは後輩達の活動の中に見てきた話だ。そもそも鳥人間サークルに入部するのは、最初から鳥人間をやりたくて入学してきたか、何となくサークル勧誘に引っ掛かってしまったか、大抵はどちらかだ。チームにはイケメンも美少女もいれば、変な先輩もいる。たぶん、鳥人間チームを擁する日本中の大学の近所では、酔っ払った鳥人間達が居酒屋で管を巻きながらあれこれ言い争っているはずだ。土屋太鳳さん演じる、ゆきなと同じような経験はどの鳥人間チームでもしているだろう。

映画に描かれているシーンは誇張ではあるかもしれないが、虚構ではない。この物語はフィクションだが、そこに描かれている「鳥人間コンテストに出場するチーム」は、まぎれもなく本物。数多くの鳥人間チームの実話をかき集めて、面白いところを濃縮した「ノンフィクション再現ドラマ」と言っても過言ではないかもしれない。

「自然体女子」に「ウザOB」、いろいろいる鳥人間

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主人公の周囲を固めるキャストも、鳥人間チームの雰囲気を存分に描いてくれた。矢本悠馬さん、前原滉さんらが演じる機体製作チームは「ステレオタイプな理系っぽさ」が強烈だが、あんな人はいない!とは言い切れないのが理系出身者として辛いところだ。そんな中、むしろ「いる、こういう人いる!」と思えたのが池田エライザさん演じる、島村和美。こういうごく自然体の女の子がいてくれると、ハイテンションのチームが引き締まる。ある意味、主人公以上に最後まで応援したくなった。

そして筆者が個人的にお気に入りなのが、なぜかサークル活動に現れてはウンチクを語る謎のOB、ペラ夫を怪演したコロコロチキチキペッパーズ・ナダルさん。この怪しさ、どこのチームにも1人ぐらいいる。そしておそらく、筆者自身がこのポジションである。その事実に一抹の寂しさを覚えながらも、彼の出番は我がことのように楽しんでしまった。

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芝浦工業大学TBTの伝統、「2人乗り人力飛行機」だけが織りなすドラマ

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ところで、物語の舞台となっている「雄飛工業大学チーム・バードマン・トライアル(TBT)」は架空の鳥人間チームだが、実在の「芝浦工業大学チーム・バードマン・トライアル(TBT)」がモデルだ。その特徴は他のどのチームにもない「2人乗り人力飛行機」

鳥人間コンテストのルールにはパイロットの人数は書かれていないが、理論上は最も飛びやすいのは1人乗り。2人乗りは彼らが自分達で考えて、あえて挑戦している目標だ。この「トリガール!」の舞台にTBTを選び、2人で乗るチームでしかあり得ない物語を紡いだ中村航さんの着眼点には脱帽するしかない。

パイロットが男女だから?それだけではない。そもそも大学生の鳥人間チームで、入学したばかりの1年生がパイロットになることはあり得ない。前年からパイロットに合わせて機体を設計し、パイロットは機体に合わせてトレーニングを重ねて、4月頃にはテスト飛行を始めているからだ。なのに主人公・ゆきなはいきなり、パイロットを目指してしまう。そこから始まるドラマは2人乗りならではのものだ。これには鳥人間経験者の筆者も唸らされた。

「ふたつのTBT」、不思議につながった物語

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さて、映画では架空のチームであり、また実在のチームでもあるTBTだが、そこには数奇なつながりがあった。

「トリガール!」の鳥人間コンテスト会場における撮影は読売テレビの全面協力により、実際に昨年2016年の鳥人間コンテストで行われている。そこで実在の「芝浦工業大学TBT」のフライト映像を、映画の「雄飛工業大学TBT」の映像として使う予定だった。ところがあろうことか、芝浦工業大学TBTの機体は離陸に失敗、飛行距離24.27mで湖面に落下してしまったのである。

パイロットの1人、重松諒さんは翌年となる今年の鳥人間コンテストで、昨年の落下で一時は旅客機にも乗れないほど心に傷を負ったことを明かした。しかしそれを乗り越えて出場した今回、芝浦工業大学TBTはこれまでのチーム記録、3,044.00mを2倍以上更新する6,625.68mの大フライトを成し遂げた

この「実在のTBT」の物語と、映画の中の「もうひとつのTBT」の物語は不思議な形で交錯する。失敗もひとつの物語として乗り越えていく、「ふたつのTBT」を重ね合わせて観た筆者は、目頭が熱くなった。是非心の隅に留めて、映画を観て頂きたい。

鳥人間は琵琶湖を目指す。その全てが詰まった「トリガール!」

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今までテレビ番組の「鳥人間コンテスト」を見たことのある方なら、あるチームは困難を乗り越え、あるチームは楽しそうに、あるチームはストイックに、またあるチームは恋愛しながら大会に出場しているのを知っているだろう。しかしそれはテレビ番組の限られた時間で切り取られたドラマでしかない。全てのチームが笑いあり涙あり、ケンカも友情も恋愛もありの1年を経て鳥人間コンテストに出場している。出場チームの数だけ、テレビでは紹介しきれない「トリガール!」の物語があるのだ。

また、ときに鳥人間チームは「テレビに映りたいから」「賞金が欲しいから」といった理由で出場していると誤解されることもある。それはある意味「ごほうび」ではあるが、本当の目的ではない。「トリガール!」のストーリーはパイロットを目指す主人公、ゆきなを中心に進んでいくが、その後ろで飛行機を作って飛ばす多くの学生達は何のために、何が見たくて鳥人間コンテストが開かれる琵琶湖、彦根を目指すのか。「トリガール!」を見終えたとき、その全てを理解して頂けるだろう。

Image Credit: 2017「トリガール!」製作委員会

9月1日(金)TOHOシネマズ 新宿、他 全国ロードショー

公式HP: torigirl-movie.com

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大貫 剛
東京都庁に技術職職員として11年間勤務後、民間宇宙開発を志して退職。ベンチャーを経て、宇宙開発や前職の経験を生かして公共事業に関する解説などの、情報発信をしている。宇宙作家クラブ会員。

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