アリアンスペース、ロケット再使用より「信頼」で勝負

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ヨーロッパのロケット打ち上げ企業アリアンスペースは4月20日、東京都内で記者会見を開き、2017年以降のロケット打ち上げ事業について説明した。そこで繰り返し述べられたキーワードは「信頼」だった。

日本でのシェアは100%へ

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アリアンスペースは2016年に11機のロケットで27機の衛星打ち上げに成功、現在は53機の衛星の受注残がある。日本企業の衛星打ち上げは今後、BS放送衛星を運用するB-SAT社の衛星を1機、CS放送や衛星通信を行うスカパーJSAT社の衛星を3機受注している。日本企業は現在、他社に打ち上げ発注をしておらず、アリアンスペースの日本シェアは100%だ。

またアリアンスペース東京事務所代表の高松聖司氏は、今後の日本市場では政府衛星と商業衛星を兼ねた衛星が増えてくると予測し、「単に安いだけでなく、政府の要望に応えられる打ち上げ企業が選ばれると考えている」と述べた。

新型ロケット2機種を開発

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従来より打ち上げ価格を下げる新型ロケットは、2019年に小型のヴェガC、2020年に大型のアリアン6を打ち上げる予定で開発を進めている。ヴェガCは現在使用しているヴェガの後継。アリアン6はアリアン5と、かつて使用していた中型のアリアン4の後継となる予定と説明されたが、実際には現在使用している中型のソユーズの後継にもなるだろう。

新型ロケットは価格を抑える一方で信頼性も重要だが、ステファン・イズラエルCEOは、「アリアン5は連続77機、ヴェガは9機全機が打ち上げ成功した。新型ロケットは実証済みの技術と打ち上げ経験により信頼性を確保している」と述べた。

再使用は価格を下げるとは限らない

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一方で、一般にアリアンスペースのライバルと目されるスペースXはロケットの再使用を成功させ、劇的なコストダウンを目指している。このことについてイズラエルCEOは「再使用がコストを下げるかどうかは実証されていないし、回収や整備などの新たなコストも掛かるだろう。また、コストと価格はイコールではない。総合的な判断が必要だ」と述べ、再使用には慎重な姿勢を示した。そして「アリアン6は信頼性を維持したままでコストを下げる。その次の段階として、従来の1/10の価格の新型エンジン『プロメテウス』の開発を進めている。再使用は市場動向を見据えながら検討していく」と、あくまで信頼性を最優先しつつ、将来の選択肢には再使用が含まれることを示した。

アリアンスペースの武器は「信頼」

イズラエルCEOは会見中、「顧客の信頼」という言葉を繰り返し用いた。世界の商業衛星打ち上げシェア50%、日本の商業衛星打ち上げ予定の100%を誇るアリアンスペースは、顧客との強い信頼関係に支えられているというわけだ。

今後のロケット開発の課題について質問されたイズラエルCEOは「衛星需要の増加に応じるため、打ち上げ可能な機数を増やす。アリアン6は年間12機、ヴェガCは4、5機が目標だ」と答えた。2016年のアリアン5とヴェガの打ち上げ機数はそれぞれ7機と2機なので、ほぼ倍増を目指すことになる。「課題と言っても、より多くの仕事をこなしたいという、持てる者の悩みだ」と余裕も見せた。

その背景には、スペースXに対する優勢があるだろう。アリアンスペースに迫る年間平均20機ほどの衛星打ち上げ受注を獲得しているスペースXは2015年、2016年と打ち上げに失敗し、成功数が10機未満にとどまっている。このため2016年には2機の衛星打ち上げがキャンセルされ、アリアンスペースに乗り換えるという事態になった。スケジュールを守れないスペースXとアリアンスペースの「信頼の差」とも言えるだろう。また、スカパーJSATは2016年にスペースXで衛星を打ち上げたが、そのあとの3機の打ち上げは全てアリアンスペースを選んだ。

「アリアンスペースの唯一の使命は、顧客に成功を提供することだ」

低価格攻勢とは異なる道を歩むアリアンスペースの目標は揺らいでいないようだ。

Image Credit: 大貫剛

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大貫 剛
東京都庁に技術職職員として11年間勤務後、民間宇宙開発を志して退職。ベンチャーを経て、宇宙開発や前職の経験を生かして公共事業に関する解説などの、情報発信をしている。宇宙作家クラブ会員。

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