月周回衛星「かぐや」、月への帰郷から5年

スペシャリスト:
Sponsored link

KAGUYA (SELENE)
Image credit: JAXA
 2009年6月11日、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の月周回衛星「かぐや」が、約1年半に渡るミッションを終え、月に落下した。「アポロ計画以降、最大の月探査」と銘打たれた「かぐや」は、科学面のみならず、美しい月や地球の映像により多くの人々の心に強い印象を残すなど、大きな成果を残した。
 「かぐや」の計画は1997年、宇宙開発事業団(NASDA)によって立ち上げられた。日本にとって月探査機を開発するのは、1990年の「ひてん」と、その孫衛星「はごろも」以来、またNASDAが、こうした科学目的の衛星を開発するのは初めてのことであった。開発は旧宇宙科学研究所(ISAS)や日本電気(後のNEC東芝スペースシステム)との協力によって行われた。
 「かぐや」は打ち上げ前に一般公募で選ばれた名前で、当時はセレーネ(SELENE)と呼ばれていた。SELENEは Selenological and Engineering Explorer の略であると同時に、ギリシア神話の月の女神の名前でもある。
 打ち上げ時の質量は約3tで、機体の寸法は2.1 x 2.1 x 4.8m。ちょっとしたトラックほどの大きさだ。その中には、15種類ものミッション機器が搭載されている。これらの機器を駆使し、月の地形や地下構造、組成、重力場の観測、月周辺の環境調査、そして月から地球のプラズマ圏やオーロラの活動の観測などを行った。得られたデータは、月の起源や進化の解明や、将来の月探査に役立てられる。
 「かぐや」は2007年9月14日、H-IIAロケット13号機に載せられ、鹿児島県の種子島宇宙センターから打ち上げられた。ちなみにH-IIA 13号機は、H-IIAの運用が三菱重工業に移管されて初の打ち上げでもあり、この日は日本の宇宙開発史に大きな足跡が2つ、刻み込まれることになった。
 ロケットからの分離後、10月4日には月を周回する軌道へ投入され、10月18日に実際に観測を行うための高度100km、軌道傾斜角90度の軌道に投入された。またその軌道変換の途中に、2機の子衛星リレー衛星「おきな」とVRAD衛星「おうな」を分離した。「おきな」と「おうな」は「かぐや」と連携し、月全球の重力場の観測を行うことを目的としていた。
 探査活動は、姿勢制御装置の一つであるリアクション・ホィールに不具合が出たり、ガンマ線分光計や月レーダサウンダーにも不具合が出るなどしたものの、概ね順調に進んだ。約1年間に渡る探査の末、2008年10月31日に定常運用を完了、この時点で「かぐや」ミッションは成功した。
 その後、衛星の状態が良好だったことから、11月1日から後期運用に入った。後期運用では、ガンマ線分光計の不具合による観測の穴を埋めるべく、引き続きデータ収集が行われた他、月面高度を50kmまで下げ、さらに詳細な探査を行った。
 この一連の探査の中で、「かぐや」は月全体の正確な地形図を作製し、月の裏側の重力異常の観測に成功、また月に永久日照の領域が存在しないことを明らかにすると共に、永久影が存在することを突き止めた。さらに月の南極にあるシャクルトン・クレーター内に氷がほとんど存在しなかったことを明らかにした。こうした成果はサイエンス誌などに掲載された。また何より、NHKが開発したハイヴィジョン・カメラによる美しい衛星の数々は、多くの人々を魅了した。
 年が明けた2009年2月12日、「おきな」が月の裏側に落下、運用を終えた。そして6月11日3時25分、「かぐや」本体も月のギル・クレーター付近へ制御落下され、運用を終えた。制御落下とは活動中の他の探査機や、月面の環境への影響を最小限にするため、何もないところを狙って落下させる技術のことだ。そして6月29日には「おうな」の電波が止められ(停波)され、こちらも運用を終えた。
 約1年半に渡る「かぐや」の運用は終わったが、得られたデータの分析は現在も続けられている。
 「かぐや」の打ち上げ後、中国は嫦娥一号を、インドはチャンドラヤーン1を、そして米国もルナー・コネサンス・オービター(LRO)を打ち上げるなど、世界中で月探査ラッシュとなった。
 LROは現在も活動している他、その後もアメリカはエルクロス、グレイル、ラディといった月探査機を次々に送り込んだ。中国も2010年に嫦娥二号を打ち上げ、2013年には嫦娥三号が月着陸に成功、着陸機と探査車(ローバー)を展開し、現在も活動を続けている。そしてインドもチャンドラヤーン2を開発しており、2017年ごろに打ち上げられ、月に着陸、ローバーを使って探査する予定だ。ロシアもルナ・グローブやルナ・レスールスと呼ばれる月探査計画を持っている。
 日本では2010年代後半を目指し、SELENE-2の検討が続けられている他、月面へのピンポイント着陸技術を実証する小型機SLIMの検討も行われている。
■月周回衛星「かぐや(SELENE)」 – TOP
http://www.selene.jaxa.jp/index_j.htm

Sponsored link
鳥嶋 真也
ライター。宇宙作家クラブ会員。 宇宙開発、宇宙科学の分野で執筆活動を行っている。

スポンサー

NEWS

コラム

  • イベント情報